最近はデジカメが流行りである。私も前々から欲しいとは思っていたが、それなりのデジカメは結構値がはる物である。5万も6万もつっこむくらいなら女子高生のように「写るんです」でも持ち歩いていた方が、よっぽどきれいに写るし機動力も上だ。
ということで今まで買い控えていたわけだが、ここへ来て旧世代機種がいっせいに値崩れを起こし、ついにDC20が1.3万円まできたので購入に踏み切った。
こいつは25万画素、フラッシュ無し、液晶モニタなし、撮影枚数16枚、と最低のスペックを誇るデジカメだが、なんといっても小さくて軽いのがよい。いくらそこそこの機能があっても、300gもするような重量物を常に持ち歩く気にはならない。
さて、このDC20。感度が異様に良いのでフラッシュがなくても大抵は何とかなってしまうのだが、やはりフラッシュ無しではどうしても困るときはある。少し逆光気味の写真を撮ると、みんなシルエットクイズになってしまうのではさすがにいただけない。
さいわい、F&Fで成功例が紹介されているので、それを参考にして私もDC20用フラッシュの作製にトライしてみた。
フラッシュというと、シャッターとの同期が大変だが、都合の良いことにDC20はシャッターを切った瞬間、シリアル端子に何やら信号が出力されるので、これをトリガにしてフラッシュを発光させるのである。
波形を調べてみたところ、以外にも結構まともなRS232Cの電圧が出ていた。通常はLoレベル(-10V)が出っぱなしになっていて、シャッターを切るとHiレベル(+10V)のパルスがちょこちょこと出る。信号さえ出ていればなんとかなるだろうと楽観視して、製作にとりかかる。
まずは材料の調達である。肝心のフラッシュユニットには「写るんです」が大きさや入手性からいって一番であろう。で、ためしにその辺の写真屋さんに行って「抜け殻ちょうだい」といったら「どんだけでもどうぞ」ってなぐあいでわけてくれた。こっちにとっては宝の山でも、向こうにとっては単なるゴミの山らしい。
で、何種類か拾ってきて慎重にバラす。中に入っているコンデンサには200〜300V程度の電荷が溜まったままになっているので、うっかりすると感電してしまう。ちなみに私は思いっきり感電してしまった。

これが取り出したフラッシュユニット。昇圧トランス、ダイオード、トランジスタなどなど。非常にちゃっちいしろものだ。電源は1.5Vのアルカリ単3電池1本が基板左の部分にはまるだけ。で、右に見えるのが問題のコンデンサ。間に抵抗を挟んで、とっとと電荷を放電させてしまった方が安全だ。
他にもいくつかバラしてみたが、ほとんどの機種はこの基板とほぼ同じ物が入っていた。供給元が同じなのであろう。ただ一つ、フジフィルムの元祖「写るんですフラッシュ」は違う形の基板が入っていた。しかしちょっと大きめなので、再利用を考えるのならこの写真のタイプの方が使いやすいと思われる。
まず、このユニットの動作を調べてみる。基本的にはスタンバイスイッチが入るとコンデンサにチャージが始まって、トリガ用のマイクロスイッチがショートされるとフラッシュが発光する。それだけだ。ここで特徴的なのは、コンデンサへのチャージが電池に対してマイナスの方向へ向かって溜まっていくことだ。この動作が結構くせ者である。
DC20から出力される信号の向きにあわせて、NPNトランジスタでスイッチングを行おうとすると、チャージが溜まるにつれカメラのグランド電位に対してフラッシュの電池が300Vも浮いてしまうことになる。それでも良いといえばいいのだが、フラッシュを使っていないときでもコンデンサには電荷が溜まりっぱなしになるので、電池の交換が危険きわまりない。実用性を考えるとこれは不可である。
ということでトランジスタによるスイッチングはとりあえず見送って、リレーによるスイッチングを試みることにした。これならカメラと高電圧部が絶縁されるので、感電の危険性はずっと小さくなる。
1.5Vでスイッチング回路が動作すれば、別電源を用意しなくてもフラッシュ用のアルカリ電池だけで事足りるので非常に都合がよい。てなわけで1.5V動作のリレーを仕入れてきた。
このリレーのコイルの抵抗は数Ω程度なので、数百mAの電流を流さなくてはいけない。一方、カメラ側から取り出せる電流は1mAもとれればいい方であろう。となると、通常のトランジスタではhFEがせいぜい100程度なので、増幅度が足らない。で、段数を増やしてダーリントン接続にすると、今度はベース・エミッタ間電圧降下が1.4Vぐらいになってしまって1.5V動作が難しくなる。
そこで、2SC3113というスーパーβトランジスタの出番となる。こいつはhFEが1000以上と、通常のトランジスタよりも1桁以上増幅度が高い。低電圧スイッチング回路にはうってつけだ。
これで回路を組んでみたが、肝心のリレーが動作しない。ためしにカメラの替わりに9Vの電圧を入れてやったらリレーはちゃんと動作する。どうやらパルス幅が狭すぎるようである。仕方ないので結局トランジスタをもう1段追加してコンデンサを挿み、パルスの伸長を行うことにした。
で、やっとカメラのシャッターにあわせてリレーが動くようになった。いきなりフラッシュを繋いでもよいが、とりあえずLEDを光らせて、同期がとれているかどうかチェックする。

が、.....この写真を見る限り光っているようには見えない。しかし、シャッターのタイミングでLEDは確かに光っていた。つまりのところ、光るタイミングが遅くて同期に失敗しているのである。
ためしにリレーをとっぱらってトランジスタのスイッチングだけで直接LEDを光らせた場合はちゃんと写るので、リレーの動作時間の分だけ遅れていることになる。なぜそんなにシビアなタイミングで信号が出力されるのか不思議だが、そうなっているのだから仕方がない。仕方ないから、せこせこと高速化に取り組む。
パルス伸長を行うコンデンサは、小さい方が応答が速くなるので、取り替えてみる。が、これ以上小さくしたら今度はリレーが反応しなくなってしまった。既にぎりぎりの所だったらしい。
しょうがないので、当初の目標から外れてしまうが、電源電圧を上げてみる。リレーの規格をオーバーしてしまうが、短時間なので焼き切れることはあるまいと勝手に想像して、約2倍の電圧をかけてコイルに電流を多く流してやる。たぶんこれでちょっとは速くスイッチングするだろう。PCのクロックアップを行うときに電源電圧を上げるのと同じ理屈だ。
まず、3V。だめ。つぎに4.5V。まだ遅い。電圧を上げればパルス幅は少々短くてもよくなるのでパルス伸長のコンデンサを小さくしてみる。それでもだめ。
ええ〜い!もってけ泥棒、9V!!

やっと光っているのが写った。それにしても1.5Vのリレーに9Vはいくらなんでもかわいそうだろうか?とりあえずパルス動作で短時間だからだから勘弁してもらって、焼き切れてしまったらその時にまた考えよう。
で、いよいよフラッシュユニットの出番だ。200〜300Vも出るスイッチングラインをリレーにつなぐ。実はこっちの耐圧も規格オーバーだが、たぶん大丈夫だろう(根拠無し)。

ホワイトアウトの様子が写って、大成功。F&Fでも指摘されているように、はっきり言って明るすぎるので減光フィルタかなんかを入れる必要があるだろう。
ともかく、ちゃんと動いたので、あとはケースに実装するだけだ。が、9V用の006P電池を入れる事なんて考えていなかったので、用意していたケースに収まらない。ちょっと大きめのケースを買ってくるまでフィールドでのテストはおあずけである。