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ロハでできる3分間お手軽クールダウンで夏を乗り切れ!

 PPC6100をクロックアップして使っている人は結構多いだろう。この場合の大きな問題点は放熱である。で、ヒートシンクにファンを挟み込むわけだ。しかし84MHzあたりまでアップするとこれでもマージンぎりぎりで、夏場になると動かなくなるからクロックを下げるという涙ぐましい使い方をしておられる方も多いに違いない。

 さて、このクロックアップ限界は当然マシンによる個体差であると思っていたが、同じ自分のマシンでも引っ越しをする度に状況が変わるということに気がついた。マシンの設置状態によって限界が変わってくるのである。マシンを狭いところに押し込むとクロックアップマージンは低下する。つまり、熱が筐体付近にこもってしまうと冷却効率が下がるのである。
 考えてみれば当然のことで、ヒートシンク(ファン付きも含む)の仕事は周囲温度からの温度差をどれだけ小さくするかであって、絶対温度を小さくするためのものではない。結論として「筐体内の温度が高ければ、局所的にどれだけ努力しても無駄」ということがわかる。

 では、PPC6100の筐体内は一体どれくらいの温度になっているのだろうか? これを調べるためにデジタル温度計を調達してきた。

 左側は秋葉原で売っていた温度センサモジュール。約¥2000。で、右側が近所のホームセンターで見つけてきた温度計で、これはセンサの先の温度と温度計本体の周囲温度の両方が測れる優れものだ。熱帯魚水槽用らしい。こちらも¥2000だった。

 さっきも述べたようにこの手の測定は外気との温度差が重要なので、これは非常に助かる。

 温度の測定精度は両方とも1℃ということだ。分解能より1桁も悪いというのが安物のご愛敬だが、センサとADCのばらつきやリニアリティが調整されていないだけであろう。絶対値はあまり信用できなさそうだが、相対値なら分解能近くまで信用してもたぶん大丈夫だ。

 温度センサをPPC6100の内部にセットする。MPUのすぐそば(ヒートシンクに接触はさせていない)と、HDDの筐体(こちらは接触)、そして外気温の3温度を測定する。

 電源をオンにして、温度計を見守る。室温は25℃。筐体内の温度はぐんぐん上がっていく。1時間経過。既に49℃にまで上昇したが、まだ上がり続けている。そして、温度計の読みが振り切れてしまった!!。50℃以上は測定できないのだ。この時点で外気との温度差は25℃だが、30℃位はいきそうな勢いだ。

 ここで実験は中断。50℃以上という数字の意味を考えてみる。いくらファンでヒートシンクを吹いているといっても、雰囲気温度とチップ表面温度の差は10〜20℃位は覚悟しなければならない。チップ内部はさらに+5〜10℃といったところか。つまり、チップ内部は70〜80℃くらいにはなっているという事だ。これは結構危険な数字だ。夏場になると外気温が上昇するので、さらにきびしい。

 なぜこんなに上昇してしまうのか。さらに、1時間経っても温度が飽和せず上昇し続けるというのも変だ。ということで、6100筐体の冷却構造を調べてみる。

 空冷ファンは電源ユニットに内蔵されており、筐体下部へ吐き出しで取り付けられている。一方、空気採り入れのスリットはHDDの下部にある。筐体上部にもスリットがあるように見えるが、これはたんなるデザイン上の凹凸で、穴は空いていない。

 取り入れられた空気はHDD,MPU,電源と順番に流れ、吐き出されるという一見まともな冷却構造だが、吸入、排出ともに筐体下部にあるという点が落とし穴になっている。

 なんと、せっかく排出した熱気をまた吸い込んでしまうのだ。

 これは致命的な構造欠陥といえる。排出された熱気をもう一度吸い込んで、再加熱して吐き出す。それをさらに吸い込んで.....と、熱的な正帰還がかかってMPUが止まってしまうまで筐体内温度は際限なく上昇していく。

 ちなみに、同じようなピザボックス型のSUNのワークステーションではどうなっているかというと、筐体の左右一面にスリットが開けられており、空気は左から右へ一方通行(右側面の前方と後方にファンがついている)と単純かつ効率的な冷却構造をしている。

 原因がわかったら次は対策だ。といっても筐体に穴を開けてファンを増設するというのは下品で能がないし、コストもかかる。で、ここで割り箸とティッシュペーパーだけで劇的に改善する画期的な方法を紹介する。

 用意するものは割り箸一本とティッシュペーパー数枚。それだけだ。

 割り箸を割って、ティッシュペーパーを数枚巻き付けて親指程度の太さにする。堅く巻いてもあまり害はないが、ティッシュがもったいないのでふわっと巻いた方が良いだろう。この白い棒を2本作る。

 それを筐体の下に、図のような配置で押し込む。吸気と排気の空間を分離して、排出された熱気が吸い込まれないようにするのだ。割り箸を芯にしたところがミソで、これがないとうまく押し込むことが難しい。

 マシン後方は熱気が溜まりやすい/私の場合はマシン左方が大きく空いている のでこういうレイアウトで空間分離したが、各自マシンの設置状況が異なるだろうからいろいろと工夫してみていただきたい。大抵マシン前方は空いているはずだから、排出された熱気を前面へ逃がすようにする。

 白棒を押し込むと、今まで感じられなかった生暖かい風が筐体下部から吹き出てくる。今までこれをほとんど再び吸い込んでいたかと思うと恐怖である。
 そして温度計チェック。効果てきめん、ぐんぐん温度が下がっていく。10分もすると外気温+21℃まで下がったところで落ちついた。何もしなかった場合は+25℃以上だったから、効率にして20%以上だ。たったこれだけで20%以上の冷却効率UPが達成されたのである。

 しかし、この実験はまだこれだけでは終わらない。次に吸排気抵抗を考えてみる。

 車でもエアインテークやマフラーがキーパーツとなっている事からわかるように、吸排気抵抗というのはなかなか侮れない。また、特に軸流型のファンは吸排気抵抗がシビアに風量に効いてくるから実は結構重要だ。

 6100型筐体は吸排気とも筐体下部で行っている。つまり、排気ファンの目の前1cmの所に壁があるわけだ。これでは吸気はともかく排気抵抗が高いことは想像に難くない。筐体を加工して排気の向きを変えるという荒技も考えられるが、ここでは単純に壁を遠ざけてみた。四隅の足の下に台を入れて足を長くし、床と筐体の間の空間を広げたのである。

 スペーサーとなる台はなんでも良いが、私は近所のホームセンターで見つけたレンガを使った。レンガと言ってもフルサイズのブロックではなくて、壁面張り付け用の90*60*15mmの大きさのものである。1枚\40。お好みに応じて何を使っても問題ないだろうが、たぶんレンガが一番安上がりだ。 これを四隅の足の下に敷く。先の隔壁もサイズを大きくして入れることを忘れてはいけない。

 ここまで手を入れるとこんな感じになる。ティッシュの端っこが少々怪しいが、大改造をしたという風でもない。

 筐体下空間が10mmから25mmに広がったところでもう一度温度を測ってみる。さらに2℃下がって、外気温+19℃まで下がった。トータルで約25%程の冷却効率アップである。

 調子に乗ってレンガ2段重ね筐体下空間40mmでも実験してみたが、0.5℃程しか改善されなかった。しかも、あまり足を長くしすぎると何のためのピザボックス筐体だかわからなくなってしまうので、レンガ1段くらいが妥当だと思われる。

 以上の実験結果をまとめると以下のようになる。

温度差 効率改善

ノーマル

25℃以上 ---

吸/排気隔壁

21℃ 20%

15mmゲタ+
吸/排気隔壁

19℃ 25%

 この実験結果で重要なのは、ほぼロハで手間もかからないということだ。6100オーナーの方は、クロックアップをしていなくてもぜひ吸/排気隔壁は入れておくことをおすすめする。温度劣化はボディーブローのようにじわじわ効いてくるのだ。


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