雪不足に悩めるモルモンの故郷 ソルトレイクシティー in USA(Jan.1999)

 さてさて、今年はソルトレイクシティーである。ソルトレイクといえばユタ、ユタといえばモルモン教である。モルモン教とは、街で「アナータ、カァーミヲ、シーンジマスカァ?」とやってるアレである。とはいっても街で勧誘されるわけでもなく、旅行者から見ればただ単にこぎれいで治安の良い街にすぎない。
 基本的に観光都市ではなくオフィス街であり人通りは結構少ない。店も少なく、食事や買い物には非常に苦労する。一番問題なのは食料品を調達できるストアがない事。一番近いところでホテルから30分も歩かなくてはたどり着けない。朝食は外に食べに出るのが面倒くさいのでパンやらジュースやらを買い込んでくるのが常なのだが、これには困った。しかしどうしようもないので結局てくてくと歩く羽目になってしまった。

 2002年に冬季オリンピックが決まっていて、街は建設ラッシュだ。至る所にクレーンが立ち、取り壊し予定の幽霊ビルが点在し、高速道路はいったん粉砕されてからの拡張工事が急ピッチで行われている。まるで4年前の長野のようである。

 スキーエリアはシティーから車で1時間弱くらいの所に点在している。1時間とはいってもフリーウェイをぶっ飛ばしてでの話だから結構な距離だ。長野市内に宿泊して志賀やら野沢やらに滑りに出かける感覚だろうか。スキー場のすぐそばにも宿泊施設はあることにはあるが、高い上に収容人数も少ない。で、大方の観光客はシティからシャトルバスに乗っていくことになる。しかしこのバスがまた結構な値段で往復で$20ときたもんだ。運転と英会話に自信があればレンタカーを借りたほうが融通が利く上にお得かもしれない。

 

 1/11 パークシティ Park City

 ここパークシティはリゾートムードあふれる有名エリアだ。したがってお値段は高め。リフト一日券が$53となかなかのもの。バスとあわせると1日で$73と目玉が飛び出そうな値段だ。
 金がかかっているだけあってゲレンデ設備は充実している。広大なエリアはきめ細かく管理されていて、主なコースには6人乗り高速リフトがかかっている。しかし、我々はそんな軟弱なエリアには用はない。ずーっと奥の方へ行くと、◆印のエキスパートコースがずらずら並ぶエリアにたどり着く。面積的にはスキー場全体のかなりの割合を占めてはいるが、リフトはペアリフトが1本かかっているだけである。リフト下以外のコースは横に(場合によっては上に)せっせと歩いてから滑る。これがハードコアなアメリカンスキースタイルである。マップを見ての通り迂回コースなどという軟弱なものは設定されていないので、初心者がうっかり入ってしまうと帰れなくなってしまうようなエリアだ。
 右手奥の方にScott'sBowlというエリアがある。ここのピークは少々歩いてのぼる必要があるが、結構景色がよい。(↓クリックすると迫力の(?)360°パノラマ写真が出てきます(73KB)。)

 ボウルのてっぺんには雪庇ができていた。ピークで景色を眺めながら休憩していると、かなり多くの人が登ってきて、度胸試しとばかりにクリフから降りていく。実は雪庇からのクリフジャンプというのは普通の人が思っているほど難しいものではない。あまり助走をつけずに斜めに降りれば、単なる斜滑降と大して変わりはない。ただし、助走をつけて踏み切り、斜面方向に豪快に飛び出すにはかなりの度胸(と少々の技術)が必要だ。そして、その上で格好良く飛ぶとなると結構な技術が必要になる。普通、何も考えずにクリフを飛ぶと「バンザイジャンプ」になってしまう。これは本人は結構なスリルを味わっているつもりでも端から見るとあまり格好良く無い。おまけに写真に撮るとなおさら格好悪い。格好良く見せるためには膝を抱え込むと良いらしいのだが、これがまた難しい。しっかり踏み切るのがポイントだとは思うが、雪庇などの端はワンメイク等のジャンプ台と違ってしっかり固まっていないから非常に難しい上に、踏み切る直前に斜面の遥か下が見えてしまうのでかなりの勇気が必要である。

 レストランの主食は例によってハンバーガーだ。チーズバーガー、ポテト、コーラで$10ちょいといったところ。値段だけ見ると日本と大して変わりはないが、量がそれぞれ2〜3倍くらいはある。食べてみるとハンバーガーの味は意外にも薄味、というより味がついていない。何じゃこりゃ?と思ったが、ケチャップとマスタードがセルフサービスになってるのである。これをお好みに応じてたっぷりと塗りたくり、手をべたべたにしながら食うのがアメリカ流のようである。

 

 1/12 スノーバード Snowbird

 さて、アメリカンハードコアスキーの名所である。ベースからトラム(ロープウェイのこと)で一気に頂上へ上がるとそこは岩山の頂上。頂上からは麓に向かって◆や◆◆のコースが広がっているという、八方尾根とよく似たレイアウトのスキー場だ。ただし、斜度は5割〜10割増しといったところ。例年のようにパウダーが山ほど積もっていればお楽しみなスキー場ではあるが、雪がなければただの岩山である。
 しかし、文句を言っても始まらないので重箱の隅をつつくようにおいしそうな斜面を探す。そして我々が見つけたのはトラム真下のDaton's Drawである。この場所、トラムからよく見える所なのにあまり滑った跡がない。何でかなーとマップを見て納得した。Cirque Traverseという尾根伝いの細いコースを延々とトラバースしてこないとたどり着けない場所だったのだ。とはいっても、雪があるのなら行くしかない。どこにでもあるようなコブ斜面を滑りにアメリカくんだりに来たのではないのだ。
 しかしCirque Traverseに入って、人があまりこない本当の訳を知る。尾根筋であるからして雪付きが悪く、いたるところに岩がコンニチワしている。進むに難儀なことこのうえない。せっかくの新しい板があっというまにボロボロだ。
 だが、信じるものは必ず救われる。とうとう年中北向きで(それなりに)柔らかい雪の残っているシュートにたどり着くことができた。

 至福の1本。苦労の後だからよけいに気持ちがよい。Daton's Drawの最大の欠点はアクセスに時間がかかること。当然2本目もチャレンジしようとしたが時間が足らず、Peruvian Cirqueを降りてこの日は終わった。

 

 1/13 なぜかまた パークシティ Park City

 この日、ちょっとした事件が起こる。なんと、同行のK氏が風邪でダウン!頑丈さでは右に出るものはいないと周囲一同から信じられている彼が「だりぃ....」ときたもんだ。それでも彼は不屈の闘志で出かけようとするのだが、それはさすがに私がやめさせた。
 で、私一人で出かける羽目に。一人で岩場を滑っても面白くないし、危険でもあるのでこの日はリゾートモードと決め込んだ。ちょうどパークシティに初めて行くという2人連れの日本人女性がいたので、彼女らの即席ガイドとなって1日を過ごすことにした。面倒くさいのでカメラは置いていった。
 2人ともそれなりに滑れるようなので、「景色がいいから」とかなんとかいいかげんに言いくるめてScott'sBowlのピークにつれていった。歩いて登るのには閉口していたようだが、確かに景色はいいのでそれなりに満足した様子。で、私の本当の狙いは雪庇のクリフジャンプ。(^^;
 2人には先に降りてもらい(雪庇以外にも降り口はある)、さて行こうかと用意をしていると、ローカルとおぼしき若者集団がやってきた。スキーもボードも両方いる。道具の違いにこだわらず適当に群れているあたり、何となくアメリカっぽく、楽しそうだ。1人の男が飛び降りて歓声が上がる。私も適当に声を上げて冷やかす。と、1人の女の子が話しかけてくる。何といっているかあまりよくわからないが、「あなたもどう?飛んでみる?」てな様子。あたり前田のクラッカー、こちとらそのためにわざわざニッポンから来てやってんでい。私は「おふこーす!」と返して飛ぶ用意をする。彼女は雪庇の端に身を乗り出すように張り付いて観戦モード。さすがローカル、クリフジャンプの見方もよく心得ている。そこならジャンプの前も後もじっくり鑑賞できるというわけだ。
 ここまで期待されてヘボなジャンプをしたらニッポン男児のコケンに関わる。私はまるで日本代表になった気分でジャンプに挑む。先に飛んだ男よりも、よりフォールラインに向かって思いっきり踏み切って飛び出す。今までに経験したこともない滞空時間の後、着地。が、下が堅いのはいかんともしがたく、板をはずしてしまい転倒。こんな急な斜面で転倒してしまうと止まらない。20m〜30mは滑り落ちただろうか。下に岩場がないのは確認していたので恐怖感はなかったが、板を取りにいくことを考えると非常に憂鬱な気分に。しかし、やっと止まって上を見上げたら例の集団が板を持って降りてきてくれた。大感謝。おまけに「今のは高くていいジャンプだったぜ!(想像訳)」とほめてくれた(ようだ)。ちょっとした勝利気分。適当にありがとうを言ったのち、「Have a nice day!」と別れた。

 

 1/14 アルタ Alta

 この日の朝もK氏はグロッキー気味。しかし昨日よりはちょっと気分がマシになったようで、1日静養したのに出ていけないのはけしからんとばかりに起き出す。
 アルタは日本ではあまり知られていないが、ローカルがたむろする人気スキー場である。ローカルに好まれる理由のひとつが「財布に優しい」という点である。リフト1日券が$31。かといってエリアがしょぼい訳でもなく、1938年から続く立派な老舗のスキー場である。ちなみにここは老舗らしくボード御法度だ。雪が降った次の日の朝にはパウダー中毒のローカル達が押し寄せるという、このスキー場の最大の欠点はリフトが少なくてしかも遅いこと。だから安いんだろうけどね。
 ここしばらく雪の降っていない状況では、名物の一番乗り争いも見られずのんびりムード。エリアの雰囲気はスノーバードに非常によく似ている。要するに◆コースばっかりと言うこと。それも当然といえば当然で、尾根をはさんですぐ隣り同士だ。どっちかというとスノーバードの方が過激なスティープが多く、アルタの方がパウダー向き、といったところか。とはいえ日本の基準からいえばアルタでも十分に過激だ。しかし、アルタの端っこの方には緩斜面エリアが広がっており、子供連れでも安心ののんびりムードである。この辺がまたローカルに人気のある理由のひとつであろう。

 メインのお楽しみエリアは一番奥のSUPREAMリフト沿いのコース。雪さえ降ればパウダー天国になるだろう事は想像に難くない、適度な斜度と過激な地形変化。しかし、雪がなければ「おあずけ」。はっきりいって非常に悔しい。

 ちょっと奥まったところにあるDevil'sCastelはあまり人が入っていなくてそこそこの滑り心地だった。しかし滑走距離が短いくせに、リフトに戻るまでかなり平地に近い場所を移動しなければならない。あまり人が入ってこないわけだ。

 GERMANIAリフトを降りてからかなり過激な尾根を登っていくと、EastGreeleyという、エリア中央にして最果てのコースにたどり着く。登っていく途中「これより上に登るな」という看板を目にするが、その時点でほとんど山のピークであり、それより上には垂直に切り立った岩がのっかっているだけで何もない。そもそも上がれるとは思えない。よくわからない看板だ。写真を撮りたかったが、足場が狭くてカメラを取り出せなかった(!)。
 たどり着けばそこはさすがに最果ての地。あまり多くの人が入ってきた感じではない。しかも、北向き斜面だ。雪は...悪くはないといった程度。斜度がかなりきつくて、しかも広い。これは気持ちがいい!が、写真がヘボい。アップで写すべきなのはわかっているのだが、背景の岩山がデカくて圧倒されてしまい、おもわずワイドに引いてしまうのだ。
 ここでK氏が一発決めてくれた。大転倒!何とパトロールが下から見ていて、「大丈夫か!」てな感じで声をかけられたけど、別にコース外とかではないから、つかまって説教を食らうとかいうことはなかった。

       

 

 1/15 この日もアルタ Alta 最終日

 K氏は相変わらず調子が悪い。前日よりも元気が無さそうだ。アルタは結構気に入った。エリアが魅力的なのもさることながら、レストランなどの雰囲気も非常にいい。おまけに財布に優しいときたもんだ。
 そしてこの日、初めて雪と呼べるものが降った!積雪10〜20cmといったところか。無いよりマシといった程度ではあるが、5日目にしてやっとパウダーである。本当のお楽しみはもう少し降り積もって明日といったところだが、しかし残念なことに我々にとっては最終日である。後1日!早く降ってくれれば.....お天道様のばかやろ〜〜〜!

 リフト乗り場では待ちかねたとばかりにローカルが列をなしている.....かと思ったらそれほどでもない。もう1日待って最高のコンディションになってから出かけるのがアルタ流らしい。とはいえ、パウダートラックの奪い合いは結構激しい。若者からおっさんまで、奇声を上げながらコースを奪い合う。こうなると地形に明るくない我々は不利だ。しかしそこは広いエリアを誇るアルタである。林の中を丹念に探すと.....あったあった、おいしそうなノートラックパウダーが。

 やっぱりパウダーが一番。滑って気持ちよく、撮って絵になる。


 

 今回は撮影機材を、一眼レフ+リバーサルフィルム と気合いを入れて大幅にバージョンアップした。失敗写真も多くなるが、全体的にクオリティの高い写真がとりやすくなったと思う。ちなみに、赤いスキーヤー(K氏)の写っている写真が一眼レフで撮った写真で、黄色いスキーヤー(私)の写っている写真がコンパクトカメラで撮った写真だ。見比べてみると雪の質感がまるで違う。持ち運びが大変なのが難点だが、これだけ仕上がりの差があると苦労して持ち歩こうという気になる。

 

 ソルトレイクへはJTBのパックツアーを利用した。カナダと違ってあまり選択肢はないし、いざという時ののサポート力を考えれば悪くない選択だと思う。こういうパッケージツアーの場合だと、日本語の話せる「現地係員」という人間がいる。特に何もなければそれほどたいした用事もないのだが、何かのトラブル(例えば誰かが病気になって動けなくなった!とか)に遭遇した場合には、かなり強力な助っ人になる。
 完璧な英語とそれなりの日本語が話せなくてはならないので、大方において彼らは日本を飛び出した若い日本人女性(男はなぜかいない)か日本語が少々怪しい日系人であることが多いのだが、ソルトレイクではなぜか普通のアメリカ人の係員が多かった。しかも、みんなかなり日本語が上手いのである。ソルトレイクでは日本ブームなのだろうか?と考えたりもしたが、話をよく聞いてみるとどうやらソルトレイク特有の事情(特典?)で日本に住んでいたことがあるから、ということらしい。なるほどね。

 
 一番初めに空港でお出迎えをしてくれた係員氏。のっけから
「は〜い、こんにちは。わたし、トドといいます。海に住んでるトドね。」
と自己紹介してくれるものだから、我々の脳裏にはまず波打ち際のトドがインプットされてしまい、これは我々をおちょくったニックネームなのだろうか?と散々悩んでしまったが、何のことはない。トッド(Todd) という普通の名前のアメリカ人だった。
 日本語が上手なのはいいが、しょうもないオヤジギャグを大声で連発するのには参った。
 彼の奥さんは日本人なのだそうだが、このギャグは彼女に仕込まれたものなのか?あるいは彼女はいつもこのギャグを聞いて暮らしているのだろうか?ナゾである。

 

 
 ホテル内のJTBツアーデスクの夕方番をしていた、Satokoさん。

 体をこわしたあげくのはてに「脂っこいものは喉を通らない」と言い出したK氏のために、「うどん」をメニューにもつ和食レストランを探し出してくれたのには感謝。
 普段はふつーのかわいい女性といった物腰だが、いざという時には頼りになりまっせ!といった感じ。


 

 
 同じくホテル内のツアーデスクで、朝番をやっていた Jason氏。

 いかにもパウダー中毒症のアルタローカルといった雰囲気。聞くところによると、実はなかなかの凄脚の持ち主らしい。しかし、残念ながら今回は一緒に滑る機会はなかった。
 我々が帰る前日に「今夜は降るから、明日はボクも滑りに行きますよー。え?なんだ、もう帰っちゃうの?それは残念。また来てくださいねー。」とのんきに言っていた。ちきしょーめ。
 得意技は「仕事ブッチ&GO」らしい...?


 

 
 滞在していたソルトレイク・プラザホテルのフロント嬢達。

 実はもう1人居たのだが、カメラを向けたら恥ずかしそうに逃げていってしまった。アメリカ人でも恥ずかしがり屋はいるのだなー、と妙なところに納得してしまった。


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