化石化したLCIIIをNetBSDで甦らせる

 私の手元でLCIIIが1台遊んでいる。こいつは発売当初Ciと同じ速さで20万!ということで、超お買い得だと信じて買った私の最初のマックである。X68000(68000,10MHz)を使っていた身にとって68030,25MHzは夢のようなスピードだった。とはいっても時の流れは速いもの。今やLCIIIなんぞほとんどゴミ扱いである。
 しかし!そんなLCIIIでも、UNIXベースのサーバとしてなら現役で働けるはずである。68030,25MHzというスペックは、今でこそゴミ同然の扱いを受けているが、2〜3昔前(さすがに一昔、とはいえない)のワークステーションだってそんなものだった。家庭内サーバのようにせいぜい1ユーザのトラフィック程度なら十分に役目を果たすことができるだろう。

 最近流行のフリーUNIXでマックで動くものというと、Linux か NetBSD ということになる。Linux はPPCオンリーなので 68K Mac の場合、必然的に選択は NetBSD となる。NetBSD は少々マイナーだが、プラットフォームの多さと頑健性で知られているシステムだ。最新バージョンは1.3.1、FreeBSDと比べるとバージョンナンバーが非常に若い。が、安定性その他の心配は無用。単に、まとまった変更があるまでリリースをしない方針らしい。ちなみに、currentバージョンの方はかなり頻繁に更新されているようだ。

 フリーUNIXの導入といえば便利なのがインストール本だが、FreeBSD や Linux などに比べて NetBSD は関連書籍がほとんど見あたらない。仕方がないのでインターネットから断片的な情報をかき集めることになる。しかし、これがなかなか難しい。UNIXを使いなれた人が書いたと思われるドキュメントが多く、結構難しいことがさも当然のように書いてあったりする。Mac でいえば、「XXX.sit を解凍してできあがったコントロールパネルをシステムフォルダにつっこんで設定を変える」くらいの記述なのだろうが、全く未知のしかもコマンドラインの世界では暗号に等しい。

 しかし、そんな状況を打開する本がとうとう出版された。「MacBSDネットワークサーバ構築ガイド」(箸 三浦一則、広文社)。私の知る限りただ一つのMacBSDのインストール本である。あまり分厚い本ではないが内容が非常に濃い。NetBSD のインストールから各種サーバのインストール、立ち上げ方法までが非常に簡潔に述べられてる。コマンドラインの内容が一字一句掲載されているので、本の通りにやれば意味が分からずともとりあえず動いてしまう。逆にオプションやらの細かい説明はほとんどされていない。解説本というよりも攻略本といったところだが、そこがかえってこの本の価値を高めている。とりあえず動いてしまえばオンラインマニュアルとにらめっこして設定をいじってみるのも楽だし、他のプラットフォーム用の解説でも結構参考になるものだ。

 さて実際のインストールだ。基本的には「MacBSDネットワークサーバ構築ガイド」の通りにやればほとんど問題無くインストールできる。以下、ちょっと気がついたことなどを中心に記述する。

 付属 CD-ROM に入っている NetBSD のバージョンは、1.3.0 だ。最新版の1.3.1がネット上からダウンロードできる。が、10MB以上もあるので回線状況にもよるだろうが一晩かかる。定額プロパイダをテレホーダイで使っている人以外にはあまりおすすめできない。1.3.1では動作機種が増えてマイナーなバグが少々FIXされたらしいが、1.3.0でもさほど大きな問題は無い、と思われる。

 最初の問題はインストールするHDだ。LCIII標準の160MBでは、なんとかならないこともないがちょっと厳しい。私は静音化の意味も兼ねて、320MBの2.5"HDを\8000で買ってきた。
 比較のために3.5"の代表(?)としてバラクーダと並べてみた。比べてみるとかなり小さいことがわかる。

 中古のHDは信頼性が低い上にそれほど安くないのであまりおすすめできないが、2.5"SCSIは現行機種がほとんどない(しかも高い)ので仕方がない。一般的な選択肢としては、メインマシン用のHDを新調してそのお下がりをもらうというのが無難なところか。

 フォーマット作業が伴うので、インストール作業はHDをいったん別のマシンの増設ドライブとして行う方が楽だ。ファイルの展開も速いマシンでついでにやってしまった方がてっとり早い。SCSIのID番号は、実際に動かすときと違っていても私の場合は大丈夫だった。フォーマッタは、HDT-PE1.5 を使った。かなり古いバージョンだが特に問題は起こっていない。

 フォーマットしてパーティションを切るわけだが、これが結構悩みどころだ。まず最低限 Root&Usr(UNIX), Swap(UNIX) の二つが必要。あとブート用にMacOSが必要なので、そのパーティションも必要だ。さらに、ものの本によると「Root と Usr は別のパーティションに分けた方が良い」とある。確かにそうだろう。というわけで合計4つのパーティションが切られることになった。
 しかし後の話になるが、作業が進んでNetBSDをブートしたところでバラバラに分けたパーティションのマウントがうまく行かず、結局パーティション切りからやり直す羽目になってしまった。冷静に考えれば、容量に余裕のないシステムなのでRoot と Usr は一緒にしておいた方が効率的だ。UNIXに慣れた人なら良いだろうが、MacBSDが初めてなんて人は一緒にしておいた方が無難だろう。

 話が元に戻ってパーティション切りの作業だ。「A/UX用のパーティションを切る」と解説本には書いてあるが、ここの段階ではMacOS用のパーティションで十分である。
 ここでは容量の配分が難しい。決められるものから順番に考えていく。まずは SWAP。メインメモリの2倍あたりが相場らしい。が、12MB*2=24MBではいろんなものを動かすとちょっとつらそうだ。てなわけで40MBを確保した。
 次はブート用MacOS領域。解説本には4MBもあれば十分みたいに書いてあるが、これは 漢字TALK6.0.7 を使う場合であって、漢字TALK7 以降を使う場合には10MBでも全然足りない。しかし、あまり余裕もないので20MBとかなりけちってみた。しかしこれでは何かの時に困るかもしれないので、HDの容量に余裕があれば30〜40MB位はあった方がいいかもしれない。
 で、残りが Root&Usrとなる。容量は260MB。ぎりぎりというほどではないが余裕があるとも言えない。240MBのHDではちょっとつらいかもしれない。

 パーティションが切れたら、ブート用のMacOSをインストールする。ブートするだけだから「最小限のシステム」で十分なのだが、ターゲットマシンとは別のマシンで作業しているときは少々面倒だ。インストール用の選択肢は「このマシン」か「全てのマシン」しかない。「全てのマシン」てのは結構無駄が多いので絞りたいところだ。私はHDをターゲットマシン(LC3)につなぎ変えてインストールしたが、こういう時は、Wish I were...というツールが役に立つようだ。これで、メインマシンをだましてやると、任意の機種の最小限のシステムをインストールできる。
 ブートするだけなら起動ができるだけで十分ではあるが、ネットワーク関係の機能拡張はインストールしておいた方が便利だ。というよりこれがないとインストール用のファイルのやりとりに困ってしまう。

 次にUNIXパーティションをフォーマットする。MacBSDインストールツールの MKFS を使う。このツールにパーティションタイプ変更の機能があるので、さっきの段階ではMacOS用のままであったパーティションをUNIX用に変更する。そしてフォーマット。ここで注意だが、SWAPのパーティションはフォーマットしない。なぜだかよく知らないがそういうものなのだそうだ。

 そして圧縮ファイルを展開、インストールだ。これがまた異様に時間がかかる。速いマシンでやっていれば多少マシだが、それでもお茶を飲めるどころか半日くらいは覚悟する必要がある。また、MacOS上から無理矢理(?) UNIXパーティションに書き込みを行うせいか、あっちこっちをシークしまくりでカリカリとやかましい。壊れるのではないかと心配になるくらいだ。
 目の前で待っているといつまでたっても終わらないので、ほっといて遊びにでも出かけてしまうのが得策だ。帰ってきたときには無事に終了しているはずである。

 インストールが終わったら本来はBuildDeviceをやるわけだが、ターゲットマシンとは異なるマシンで作業している場合や SCSIのIDを変更する場合は、まだやってはいけない。BuildDeviceは最初にブートする直前に行うのが吉である。

 ここまでできたら、HDを元に戻す等マシンのセッティングを行う。スイッチを入れて起動パーティションからMacOSが立ち上がったら、忘れずにBuildDeviceを行う。そしていよいよNetBSDのブート。
 初めてブートしたときにはいろいろと「おまじない」をかける必要があるが、解説本の通りにやれば全く問題はない。rc.confを設定して、パスワードをかけて、ユーザーを作って、再起動する。

 ここまでできればインストールは成功だ。

 次はアプリ導入編


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